- ブータンは国家プロジェクト「ゲレフ・マインドフルネス・シティ」の財源として、最大1万BTCを投資する。
- 米国上場のビットコインETFは、年末の大規模な償還を受け、30億ドルの流出を記録。
- ビットコインは8万6000ドル付近にとどまり、売り圧の枯渇を示している。
ブータンの10億ドル規模のビットコイン投資、ETFによる売り圧に対抗
ビットコイン(BTC)は12月17日、8万6000ドル近辺で推移し、月足ベースでの安値圏にとどまった。スポット市場では、CoinMarketCapのデータによると、日中の取引高は430億ドルと前日比で4%減少し、米国上場の主要ETFで2週間にわたって継続してきた資金流出を受け、売り手の勢いが弱まりつつある可能性を示している。
暗号資産(仮想通貨)市場全体がリスク回避と流動性の引き締めに直面するなか、ブータン政府は画期的な投資方針を発表し、戦略的国家資産としてのビットコインの長期的意義を改めて浮き上がらせた。
ブータン政府は、デジタル技術と持続可能性の統合を目指す国家主導の経済開発プロジェクト「Gelephu Mindfulness City(ゲレフ・マインドフルネス・シティ:GMC)」のために、最大1万BTC(約10億ドル相当)を割り当てる計画を正式に発表した。
この構想は、Jigme Khesar Namgyel Wangchuck(ジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク)国王の意思を受けて発表され、ビットコインをブータンがデジタル化され、自立した経済へと移行するための金融基盤と位置づけている。公式声明によると、このプロジェクトでは、余剰の水力発電を活用してビットコインをマイニングし、インフラ整備、教育、技術パートナーシップの資金源とする。
ブータンの政府系ファンド、Druk Holding & Investments(ドゥルク・ホールディング・アンド・インベストメンツ:DHI)は、すでに2020年以降、アジアで最も控えめながらも強力なビットコインマイニング事業を運営し、準備金を積み上げてきた。今回の新たなフェーズは、国の生産性とビットコインによる資金調達を結びつけるもので、新興国としては極めて珍しいモデルだ。
一方、米国市場における機関投資家のセンチメントは対照的。Farside Investorsのデータによると、12月前半だけでビットコインETFからの純流出額は30億ドルに達した。
〈12月17日時点、月次ベースの流出額は30億ドルに達している。出典:FarsideInvestors〉
月内で最大の流出日は15日で、総額3億7600万ドルの償還が発生した。なかでもフィデリティのFBTCは、この日だけで2億3000万ドルの流出を記録した。続く16日にはブラックロックから2億1000万ドルが流出し、日中の総流出額2億7720万ドルの75%を占めた。
こうした大規模な資金流出は、10月以降のビットコインの回復局面の重しとなっており、年末の利益確定や米国のマクロ経済政策をめぐる不透明感もあり、月初来で価格は約7%下落している。
11月には40億ドルがETFから流出しており、機関投資家の売却が2カ月連続で続いている。ブータンのような国家による継続的な需要がもたらす追い風や正当性が、2025年が弱気のままで終わろうとするなか、さらなる下落に対する十分な緩衝材となるかどうかはまだわからない。
ビットコイン価格見通し:8万5000ドルを守れるか、7万7000ドルへ下落するか
12時間足チャートにおけるビットコインの値動きは、9万2000ドル近辺で明確なダブルトップのパターンを形成しており、11月の上昇相場後の短期的な息切れを示している。トップ1、トップ2と示された2度のブレイクアウト失敗によって確認されたこのパターンは、9万2036ドルに位置するパラボリックSAR(ストップ・アンド・リバース)水準からの急激な反落とも一致している。
当記事執筆時点、BTCは8万6100ドル前後で取引されており、月初から約7%下落している。RSI(相対力指数)は38.4付近で推移しており、弱気の勢いが強まりつつある一方で、売られ過ぎの状態に近づいていることも示されている。RSIが40を下回る水準は、特に今週のように出来高が細る局面では、調整局面の終盤を示すことが多い。
〈出典:TradingView〉
テクニカル分析は、ダブルトップから算出される目標値は7万7500ドル付近のサポートゾーンを示しており、チャート上では57.4%のフィボナッチ・プロジェクションと重なっている。この水準は、売り手が主導権をさらに強めた場合に想定される下値目標だ。8万5000ドルを出来高を伴って明確に割り込めば、その水準まで下落が加速する可能性がある。
一方で、8万7500ドルから8万8000ドルのレジスタンスを上抜けて終値を維持できれば、ショートカバーが誘発される可能性がある。その場合、強気派はダブルトップを無効化するために、9万ドル水準を回復する必要がある。29.8%のフィボナッチ・リトレースメントと、9万ドル超でのSARシグナルの反転が重なれば、9万2000ドルを再テストする余地が生まれ、1月初旬に向けて強気の勢いが復活するかもしれない。
現時点では、8万5000ドルが直近の攻防ラインだ。この水準からの反発がRSIの45超への回復を伴って確認されれば、9万ドルから9万2000ドル方向への上昇モメンタムが回復する可能性がある。一方、これを維持できなければ、7万7000ドルから8万ドルのレンジへのより深い調整にさらされることになる。
Kalshiの予測市場では、年内にビットコインが史上最高値を更新する確率は2%まで低下している。エルサルバドルやブータンによるビットコインの積み増しは、短期的には強まる弱気圧力を相殺するかもしれない。しかし、ビットコインETFからの資金流出が落ち着くまでは、12月末に向けて8万5000ドルを守れるかどうかが次の決定的なトレンドを左右することになる。
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