●イーサリアム(ETH)は約2900ドル付近で下げ止まり、12月に積極的な買いを続けるBitmine(ビットマイン)の存在が年末にかけた下落リスクを抑えている。
●Tom Lee(トム・リー)氏は、ビットマインの購入戦略は、例年「ボクシング・デー(12月26日)」以降に強まりやすい税金対策の売り圧力を和らげる狙いがあると説明した。
●ステーキング動向は強気に転じ、3日間で入金(バリデーター参加)待ちは71%増加した一方、引き出し待ち(退出)は30%減少した。
ビットマイン、12月に12億ドル相当のETH購入──トム・リー氏、米国の税務シーズンによる売り圧力を抑制
イーサリアム価格は週明け、方向感に乏しい展開で始まった。CoinMarketCapによると、執筆時点で価格は約2900ドル付近で、日中高値の約3051ドルから約1%下げた水準を推移している。ただし、イーサリアムを財務資産として保有するBitmine(ビットマイン)による新たな購入発表や、ステーキングの動きからは、年末にかけてETHが月間安値を更新する可能性は低いことが示されている。
価格が伸び悩む中でも、ビットマインは12月に入って3週連続でイーサリアムの買い増しを続けた。Tom Lee(トム・リー)氏がエグゼクティブ・チェアマンを務める同社は、29日に約1億3000万ドルを投じて4万4463ETHを購入したと公式リリースで発表した。これにより、同社の保有量は411万525ETHに達した。
リー氏は次のように述べている。
「カレンダーが最終週に近づくと、市場の取引は鈍りがちだ。ビットマインは過去1週間で4万4463ETHを追加取得したが、これは当社が世界最大の “新規資金による買い手” であり続けていることを示している」
リー氏はさらに、この買い戦略について、年末の税務対策を考えた投資家やトレーダーによる売り圧力から価格を下支えする狙いがあると説明した。暗号資産や暗号資産関連株で最近見られる下落局面は、年末の税金対策に伴う売却が主な原因となっており、その影響はボクシング・デー(12月26日)以降に最も強まりやすいという。
数字もこの戦略を裏付けている。今回の購入により、ビットマインの12月の取得量は合計37万8565ETHとなった。12月のETH平均価格を約2950ドルとすると、同社は今月だけで約11億1700万ドルを投じた計算になる。
内訳を見ると、12月22日に9万8852ETHを取得し(この時点で保有量は400万ETHを突破)、12月8日週には13万8452ETH(約4億3500万ドル相当)を購入した。これは直近1カ月で最大規模の週次購入だった。
12月1日週にも9万6798ETHを追加している。11月には19万2353ETHを購入しており、同社の積極的な蓄積戦略が2025年末まで継続していることがわかる。
他の大口保有者も年末の「ETH下支え」に加勢
執筆時点でETHは約2925ドル付近を推移しており、月間高値3447ドルから約15%下落している。ただし、ビットマインが12月に投じた約12億ドル規模の資金は、約2700ドル付近に存在する「大規模な清算が集中する水準(この水準を割ると強制清算が連鎖しやすい価格帯)」を下回るのを防ぐ役割を果たしてきた。
ビットマインや他の上場企業は購入を公表する義務があるが、水面下では他の大口投資家も同様の動きを見せている可能性がある。
〈バリデーター参加待ちは71%急増、退出待ちは30%減少 | 出典:ValidatorQueue〉
オンチェーンデータによると、年末を前にステーキングに参加しようとする投資家が増加している。11月下旬以降、参加待ち・退出待ちの動きは一旦大きく減少したが、12月26日頃から再びステーキングの入金待ちが増加し始めた。
12月26日時点で、バリデーター参加待ちとなっているウォレット数は43万5066だったが、3日後には74万5619に増加し、71.3%の急増となった。一方、退出待ちは51万3774から36万518へと、29.8%の減少となっている。
急激なステーキング参加の増加により、参加までの待機期間は12.19日に延び、12月26日時点の7.55日から約60%長くなった。ただし、入金が増え、引き出しが減るというポジティブな動きは、年末最終週に向けて弱気な投機ポジションを積み増そうとする動きを抑制する可能性がある。大口投資家が年末の価格変動に対抗する姿勢を明確に示しているためだ。
ビットマインの29日の声明も、ステーキング重視の流れを裏付けている。同社は、2026年に商用化を予定する「MAVAN(Made in America Validator Network)」に向け、3社のステーキング事業者と提携することを明らかにした。
2025年12月28日時点で、ビットマインがステーキングしているETHは40万8627ETH(1ETH=2948ドル換算で約12億ドル)に達している。これは同社が保有する411万ETHの一部に過ぎず、今後ステーキングが財務戦略の中核になれば、大幅な拡大余地がある。なお、Quatrefoilが算出するCESR(総合イーサリアムステーキング利回り)は2.81%となっている。
〈ビットマインの純資産価値(NAV)に対するプレミアムは、7月の0.17から0.013に低下 | 出典:TheBlock〉
一方、The Blockのデータによると、ビットマインの株式(BMNR)は1株26.84ドル前後で取引され、米国で47番目に取引量の多い銘柄となっている。
同社株のNAV(純資産価値)に対するプレミアムは、2025年7月の0.17から現在は0.013まで低下しており、ETH価格とほぼ同水準で評価されている。これは、同社の業績がイーサリアムとますます強く連動していることを示している。
年内の下落局面を経験したビットマインは、他のステーカーと同様にステーキングによる利回り獲得を重視し始めている。
リー氏は次のように続けた。
「我々は “MAVAN(Made in America Validator Network)” と呼ぶステーキング基盤の構築を着実に進めている。これは最高水準のセキュリティを備えたステーキングインフラとなり、2026年初頭に展開される予定だ」
さらにリー氏は、MAVANおよび提携ステーキング事業者を通じてビットマインのETHがすべてステーキングされた場合、年間で最大3億7400万ドルの利回りを生み、1日あたり100万ドル超の収益も視野に入ると予測した。
その背景として、GENIUS(ジーニアス)法やSEC(証券取引委員会)の「Project Crypto」といった米国の新たな政策が、業界にとって大きな転換点になる可能性をあげている。


