● 本日の下落はニュースではなく、流動性不足下での強制清算連鎖が主因。
● 清算額の拡大は実損失ではなく、積み上がったレバレッジ解消の結果。
● 個人投資家の最大リスクは値動きではなく、清算による強制退場。

本日の暗号資産市場の急落は、ニュースそのものよりも強制清算の連鎖が価格を押し下げた典型例だった。短時間で複数回の清算波が発生し、流動性の薄い価格帯を一気に下抜けたことで、ビットコインは79,000ドルを割り込んだ。過去12時間で約13億ドル規模の清算が確認されており、これは「売りたい投資家」が急増した結果ではない。レバレッジが強制的に解消された結果である。

清算(Liquidation)とは、レバレッジ取引において証拠金が維持率を下回った際、取引所が投資家の意思に関係なくポジションを強制決済する仕組みだ。問題は、清算が市場に成行注文を発生させ、価格下落をさらに加速させる点にある。一度始まった清算は、次の清算を呼び、連鎖的に広がる。

添付のCryptoQuantチャートが示す通り、2019〜2020年はデリバティブ市場が未成熟で、高レバレッジと流動性不足が常態化していた。わずかな下落でもロング清算が連鎖し、2020年3月のコロナショックでは、強制清算が価格崩壊を自己増幅的に引き起こした。

市場構造は進化したものの、清算リスクが消えたわけではない。2021年5月19日には、中国のマイニング規制と過熱相場の崩壊を背景に、約85〜100億ドル規模の清算が発生。2022年6月18日には、LUNA/UST崩壊後の信用収縮により、約60〜80億ドルの連鎖清算が起きた。

さらに2025年9月22日には、FRBのタカ派的発言を受けたマクロ同時リスクオフで、24時間に約36.2億ドルのロングが消滅。2025年10月10〜11日には、米中貿易戦争を想起させる関税ショックを受け、暗号資産市場全体で約193億ドルという史上最大規模の名目清算が発生している。

ただし、CryptoQuantのオンチェーン分析では、この局面におけるBTCとETHの実損失は約23.1億ドルにとどまった。名目清算額の大きさは、実体経済の損失というより、市場に積み上がっていたレバレッジの解消量を反映したものだ。

本日の下落も同様に、地政学リスクや金融政策といった材料は引き金に過ぎず、核心はフローと流動性にあった。流動性が不安定な環境下で極端なレバレッジが価格の「空白地帯」を生み、清算が連鎖することで、値動きは増幅された。

個人投資家にとって最大のリスクは、価格予想を外すことではない。清算によって市場から強制退場させられることだ。一時的な下落が、レバレッジを通じて取り返しのつかない損失へと変わる。

だからこそ重要なのは、暗号資産のマーケットにおいては「どこまで上がるか」ではなく、「どこまで耐えられるか」。レバレッジ水準、ポジションサイズ、流動性環境を前提に、清算が起きても生き残れる設計を行う必要がある。

価格以上にレバレッジ解消のインパクトが際立つ今、清算は例外的な事故ではない。市場構造が必然的に生み出す現象である。個人投資家が向き合うべき問いは、相場観ではなく、「清算を前提に、どう生き残るか」だ。

オンチェーン指標の見方

Bitcoin: Long Liquidationsとは デリバティブ市場において全取引所・全銘柄を対象としたビットコインのロング清算量を示している。清算とは、価格の急落によって証拠金が不足した際に、ポジションが取引所によって強制的に決済される仕組みである。ロング清算が急増する局面では売りが連鎖し、ロングスクイーズによって価格変動が一段と激しくなりやすい。

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