2026年2月9日、香川県警は18歳の高校3年生を常習賭博、詐欺、資金決済法違反の容疑で書類送検した。少年はオンラインカジノで1,104回もの賭博を繰り返し、さらに電子マネーを詐取し、無許可で暗号資産交換業を営んでいた。「インターネット上の知り合いに勧められた。成功体験が忘れられず、やめられなかった」――その供述は、デジタルネイティブ世代が直面する新たな犯罪リスクを象徴している。
日本国内では近年、Z世代(1990年代半ば〜2010年代初頭生まれ)による暗号資産を悪用した犯罪が急増している。SNSでの勧誘、AI技術の悪用、オンラインカジノとの接続――デジタル世界に生まれ育った世代が、その技術リテラシーを犯罪に転用する事例が後を絶たない。
本稿では、2025年後半から2026年初頭にかけて日本国内で発生したZ世代の暗号資産関連犯罪を追跡し、その傾向と社会的影響を検証する。
2025年後半から2026年初頭にかけて、日本国内では若年層による暗号資産関連犯罪の逮捕・書類送検事例が相次いで報告されている。
【主な事例】
これらの事例に共通するのは、SNSを利用した集客、本人確認の緩さを悪用した取引、オンラインカジノや遊興費のための資金調達という構造だ。
警察庁の統計によると、2025年上半期の特殊詐欺における暗号資産関連の被害は深刻化している。
特に注目すべきは、20代・30代の若年層が被害者としても加害者としても増加している点だ。国民生活センターへの暗号資産関連の相談も増加傾向にあり、マッチングアプリやSNSでの勧誘が被害の入り口となっている。
Z世代は幼少期からインターネット環境に親しみ、SNSやデジタル決済を日常的に利用してきた。しかし、その技術リテラシーは「使いこなす能力」に偏り、法的・倫理的リスクへの認識が乏しいケースが多い。
先述のの香川の事件では、少年が「成功体験が忘れられなかった」と供述しているが、これは初期の小さな成功が心理的ハードルを下げ、犯罪行為をエスカレートさせる典型的なパターンだ。
中高生によるAI利用回線不正契約事件では、犯人の一人が「SNSで注目されたかった」と供述している。Z世代にとってSNSは自己表現と承認の場であり、犯罪行為すら「注目を集める手段」として認識される危険性がある。
多くの事例で、暗号資産取得の動機としてオンラインカジノが関与している。オンラインカジノは日本国内では違法だが、海外運営のサイトは本人確認が緩く、暗号資産での入金が可能だ。若年層は以下の流れで犯罪に巻き込まれる:
2025年10月の事例では、中高生がAIプログラムを利用して不正契約を大規模化していた。海外でも2025年8月にカナダの17歳少年がAIツールとソーシャルエンジニアリングを駆使し、約70億円相当の暗号資産を不正取得した事例が報告されている。
Z世代はAI技術を犯罪の効率化ツールとして使いこなす能力を持っており、これが従来の少年犯罪とは一線を画す点だ。
日本の法律では、14歳以上の未成年は「犯罪少年」として逮捕・勾留の対象となる。また、2022年の少年法改正により、18歳・19歳は「特定少年」として扱われ、以下の厳格な措置が適用される:
今回の香川の事例では18歳の高校生が書類送検されているが、起訴されれば実名報道される可能性があり、社会的影響は計り知れない。
インターネット時代において、逮捕や書類送検の事実はデジタルタトゥーとして半永久的に残る。
Z世代にとって、SNSでの「注目」は得られるかもしれないが、それは負の注目であり、将来の破壊を意味する。
暗号資産犯罪で得た利益は没収され、被害者への賠償責任も発生する。未成年の場合、保護者が賠償責任を負うケースも多い。
さらに、前科・前歴は就職活動に深刻な影響を及ぼす。特に金融業界、IT業界、公務員など信頼性が重視される職種では採用が困難になる。
少年院送致や保護観察処分を受けた場合、社会復帰後も偏見の目にさらされる。また、暗号資産やオンラインカジノへの依存は依存症としての側面もあり、適切な治療とサポートがなければ再犯のリスクが高まる。
日本政府は暗号資産を悪用した犯罪への対策を強化している。
暗号資産交換業者には金融庁・財務局への登録が義務付けられており、利用者の本人確認が必須だ。しかし、無登録業者や海外業者を通じた取引が依然として問題となっている。
業界団体「日本暗号資産取引業協会(JVCEA)」は、取引所での本人確認徹底とマネーロンダリング対策の強化を進めている。
愛知県豊明市では未成年者のSNS利用を制限する独自条例を制定し、保護者や教育機関と連携した安全利用のルールづくりを進めている。
また、国民生活センターや政府広報オンラインは、暗号資産投資詐欺への注意喚起を強化している。
暗号資産は革新的な技術であり、適切に利用すれば投資や決済の新たな選択肢となる。しかし、その匿名性や国際性が犯罪に悪用されやすいことも事実だ。
Z世代は高い技術リテラシーを持つが、それは両刃の剣だ。以下の点を肝に銘じてほしい。
SNSやネット上の「簡単に稼げる」「必ずもうかる」という情報は詐欺の常套句だ。オンラインカジノは違法であり、無登録の暗号資産交換業も犯罪行為だ。
18歳・19歳の「特定少年」は実名報道される可能性があり、インターネット上に記録が残る。一度の過ちが一生を左右することを理解すべきだ。
SNSでの注目や承認欲求を満たすために犯罪に手を染めることは、結局現実世界での信頼を失う行為だ。家族、友人、将来の雇用主――すべての人間関係に悪影響を及ぼす。
もし暗号資産やオンラインカジノに関するトラブルに巻き込まれたら、以下の機関に相談してほしい。
Z世代は、これまでのどの世代よりもデジタル技術に精通している。しかし、その能力を犯罪に利用するか、社会に貢献するために使うか――選択は自分自身にある。
2026年2月の香川の事例は、18歳の少年の人生に深い傷を残した。彼が「成功体験が忘れられなかった」と語ったように、短期的な利益は長期的な損失を覆い隠してしまう。
暗号資産は未来の金融インフラの一部となる可能性を秘めている。だからこそ、Z世代には正しい知識と倫理観を持ってこの技術と向き合ってほしい。
犯罪の先に待っているのは、逮捕、前科、社会的孤立、そして消えないデジタルタトゥーだ。一時の興奮や利益のために、未来を失わないでほしい。


