● EPUは2025年にパンデミック期を上回り、構造的不確実性が常態化している。
● 一方でSOPRは極端な崩壊を示しておらず、長期保有者の分配圧力は限定的。
● マクロ不安は最大級だが、オンチェーンでは最終的な投げ売り局面は未確認。
世界の経済政策不確実性指数(Economic Policy Uncertainty Index:EPU)は、足元で歴史的高水準を更新している。2000年=100基準で見ても、2020年のパンデミック期のピークを明確に上回る水準に達した。経済産業省も「不確実性がもたらす経済的影響」において、政策を巡る不透明感が企業投資や家計消費を抑制し、自己実現的に景気を下押しする可能性を指摘している。不確実性は単なる心理的要因ではなく、実体経済を通じて波及する構造変数である。
2020年のEPU急騰は、COVID-19という明確な外生ショックに起因していた。その後、各国中央銀行は迅速にゼロ金利政策や量的緩和へ転換し、大規模な財政出動も実施されたことで、市場は政策の方向性を織り込み、指数は一旦沈静化した。2023年も米地銀問題や債務上限問題などを背景にEPUは上昇したが、インフレ鈍化と利上げ打ち止め観測の広がりとともに変動幅は徐々に縮小していった。いずれも危機の輪郭が比較的明確であり、政策対応が示されたことで不透明感は和らいだ。
しかし、現在の上昇は様相が異なる。通商政策の不透明化、地政学的分断の固定化、金融政策の方向性のばらつき、選挙イヤーに伴う政治リスクなど、複数の要因が同時進行している。単一ショックではなく、政策レジームそのものへの不信が背景にある点が特徴だ。2025年の水準は、一過性の危機ではなく、構造的な不確実性の常態化を示唆している。
このマクロ環境は、ビットコインのオンチェーン指標とも対比できる。添付のSOPR Ratio(LTH-SOPR/STH-SOPR)は、長期保有者と短期保有者の利益確定度合いを比較する指標である。SOPR(Spent Output Profit Ratio)は、移動したコインが取得価格に対して利益か損失かを示し、1以上は利益確定、1未満は損失確定を意味する。
2020年はEPU急騰と同時にSTH-SOPRが急落し、短期保有者の損失確定が顕在化した。2023年も短期層の損失確定が繰り返されたが、長期保有者の大規模な分配は限定的だった。恐怖がオンチェーン上で「行動」に転化していた局面である。
一方、現在はEPUが過去最高圏で推移するにもかかわらず、SOPR比率は極端な崩壊を示していない。長期保有者は積極的に売却しておらず、市場内部の分配圧力は限定的だ。マクロの不安は高いが、オンチェーンでは「投げ切り」はまだ確認されていない。
不確実性のピークは必ずしも価格の底と一致しない。重要なのは、恐怖が実際の損失確定行動へ転化しているかどうかである。EPUが過去最高を更新する一方、SOPRが相対的に安定しているという組み合わせは、現在が急性ショック型ではなく、構造的不安型の局面にあることを示唆する。今後は、短期保有者の損失確定が加速するのか、あるいは長期保有者の分配が始まるのかが、次の市場局面を決定づける分岐点となる。
オンチェーン指標の見方
SOPR(Spent Output Profit Ratio)は、移動したコインが取得価格に対して利益か損失かを示す指標。1以上は利益確定、1未満は損失確定を意味し、市場参加者の心理状態を可視化する。SOPRが1を下回る局面はパニック売り、1を回復・定着する局面は回復初動を示唆する。
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