● トランプ関税発言は市場の不安定なポジションに火をつける“引き金”として機能している。
● 下落局面ではSTH-SOPRが1を割れ、短期ホルダーの損切りが加速している。
● 売りの主体は長期保有者ではなく、恐怖に反応する短期勢である可能性が高い。

トランプ氏の関税発言は、ビットコイン市場に繰り返し大きな影響を与えてきた。特に注目すべきは、価格変動の主役が「短期ホルダー」であるケースが多い点である。オンチェーン指標であるShort-Term Holder SOPR(以下STH-SOPR)を確認すると、その構造が明確に浮かび上がる。

2025年4月、中国に対する60%関税が発表された局面では、SNS上で急速に不安が拡大した。同時にSTH-SOPRは1を明確に割り込み、短期ホルダーの損切りが急増。これは典型的なパニック売りの構図であり、個人投資家が恐怖に押されて安値圏で売却したことを示している。

続く2025年10月、BTCが126,000ドルの史上最高値を更新した直後、中国への100%関税が発表された。一時的に市場は大きく揺れたが、関税はすぐに撤回。この時点ではSTH-SOPRは1付近を維持しており、短期勢はまだ利益圏にあった。結果的にこの局面は「高値で売れる最後の機会」となり、その後SOPRは1を割れ、長期にわたる下落トレンドへ移行した。

そして2026年2月。最高裁が関税を違法と判断したにもかかわらず、15%の一律関税が発表され、市場の不確実性は再び拡大。現在、STH-SOPRは明確に1を下回っており、短期ホルダーが損失で売却している状態が続いている。

なぜこのような現象が起きるのか。鍵を握るのは、市場参加者の「保有期間」と「ポジション構造」の違いである。短期ホルダーは取得から間もないコインを保有しており、平均取得価格が現値に近い。そのため、価格が数%動くだけで含み益・含み損の状況が急速に変化する。心理的な耐久力も相対的に弱く、ボラティリティが高まる局面では最も早く行動する層となる。

関税発言のような強いヘッドラインは、「不確実性の急上昇」を引き起こす。市場は内容そのもの以上に、“何が起きるか分からない状態”に反応する。短期参加者は将来の価格パスを読めない局面でリスクを縮小しやすく、まずレバレッジポジションの整理が始まる。デリバティブ市場でのポジション解消は価格変動を増幅し、それが現物市場の売却を誘発する。

さらに、短期ホルダーはニュースやSNSに強く影響を受けやすい。恐怖が拡散すると、価格下落そのものが「さらに下がるかもしれない」という期待を生み、自己強化的な売り圧力へと変化する。この過程で含み損を抱えたコインが市場に戻され、オンチェーン上では損失確定トランザクションが増加する。

それがSTH-SOPRの1割れとして表れる。

SOPRが1を下回るということは、「短期勢が取得価格を下回って売却している」ことを意味する。つまり、価格の下落は単なる調整ではなく、心理的な降伏(キャピチュレーション)を伴っている可能性が高い。

この構造を理解することで、ヘッドライン主導の下落が「長期保有者の分配」なのか、「短期勢の投げ」なのかを見分けることができる。今回の関税局面で確認されているのは、後者の色合いが強い動きである。

重要なのは、これらの局面が必ずしも長期ホルダー主導の分配ではない点だ。データが示すのは、恐怖主導の短期勢の売りである。トランプ関税ヘッドラインは、価格以上に「誰が売っているのか」を映し出すトリガーとなっている。

オンチェーン指標の見方

STH-SOPRは「短期ホルダーが利益で売っているか、損失で売っているか」を示す指標で、基準は1。1を下回ると、短期勢が損失で投げている=恐怖・パニック局面を意味する。深い1割れは下落加速と重なりやすいが、同時に“痛みの進行度”も示す。反発局面で1を回復・維持できるかが、本格回復の分岐点となる。

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