この記事の要点
金融活動作業部会(FATF)は2026年3月3日、「ステーブルコイン及びアンホステッド・ウォレット(P2P)に関する報告書」を公表しました。
ステーブルコインやアンホステッド・ウォレットを悪用したマネロンへの対応を国際的に強化することを目的としたもので、金融庁は同月6日、この報告書の内容を国内に向けて周知しています。
具体的には、不正利用に関する脅威・脆弱性の分析、各法域のリスク低減に向けた好取組事例、官民の関係者に向けた勧告などで構成されており、悪用事例の増加を受けて今回の策定に至ったと説明しています。
今回の公表によりアンホステッド・ウォレットへの規制強化の方向性が国際的に示されたことで、取引所からの出金時に本人確認(KYC)や送金先の申告を義務付ける仕組みが各国で強化される見通しで、自己管理型ウォレットを利用する個人にも直接影響が及ぶとみられています。
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今回の報告書が対象とするのは、主にステーブルコインと「アンホステッド・ウォレット」を使ったP2P取引です。
アンホステッド・ウォレットとは、取引所などの事業者ではなく、利用者自身が秘密鍵を管理するウォレットを指し、その代表例として、MetaMask(メタマスク)やLedger(レジャー)などのハードウェアウォレットがあります。
こうしたウォレット同士で直接行われる送受信がP2P取引と定義されており、FATFはこの領域でステーブルコインの悪用事例が増加していると指摘しています。
報告書には、各国の規制当局や金融機関、暗号資産事業者(取引所など)、そして一般利用者を含む民間関係者に向けた勧告が盛り込まれており、リスク低減に向けた具体的な取り組みの方向性が示されています。
利用者の立場から見ると、アンホステッド・ウォレットへの規制強化の方向性が国際的に示されたことになり、その影響は日本の個人利用者にも及ぶとみられています。
すでに欧州連合(EU)では、アンホステッド・ウォレットへの送金に際して一定額以上の場合に送金者情報の提供を義務付けるトラベル・ルールが施行されており、今回の報告書はこうした規制の国際的な波及を後押しする内容となっています。
こうした流れを受けて、取引所からアンホステッド・ウォレットへの出金時にKYCや送金先の申告を求める仕組みが各国で導入・強化される動きは、今後さらに加速するとみられています。
規制強化の背景にあるのは、ステーブルコインそのものの悪用実態です。テザー(USDT)やUSDコイン(USDC)などの主要銘柄が国際送金や資産保全に広く使われる一方で、追跡が難しいP2P取引を経由したマネロンへの悪用が課題として挙げられています。
こうした背景から、報告書はステーブルコインの発行体や取引を仲介する事業者に対しても、より厳格なモニタリング体制の整備を求めています。
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FATFの勧告に法的拘束力はなく、加盟国は相互審査(FATF審査)を通じて勧告の実施状況を評価されます。
日本はこの審査への対応を重ね、資金決済法や犯罪収益移転防止法の改正を積み重ねてきた経緯があり、国際的な規制強化の潮流に対して継続的に制度整備を進めてきた実績があります。
こうした対応実績を背景に、アンホステッド・ウォレットへの送金規制やステーブルコイン事業者への新たな義務付けが、国内の制度整備の議論に影響を与えるとみられています。
制度整備の動きが進めば、個人利用者への影響も避けられません。現時点で直ちに手続きが変わるわけではなく、国内取引所によるアンホステッド・ウォレットへの出金条件の変更や、ステーブルコイン送金時の追加本人確認といった対応が、中期的に進む見通しです。
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Source:金融庁
サムネイル:AIによる生成画像


